ChatGPTの開発元であるOpenAIのCEOとして一躍有名となったサム・アルトマン。実はその他にも多才な経歴を持っています。今回はその1つである「Worldcoin」についてご紹介していきます!
Worldcoinは、OpenAIのCEOであり元YコンビネーターCEOでもあるサム・アルトマンと、ドイツの物理学者であるアレックス・ブラニアによって2020年に設立された、誰もが簡単に金融ネットワークにアクセスできることを目指しているプロジェクトです。
Worldcoinは大きく2つの目的を持っています。
1つ目は「人間であることの証明」です。
Worldcoin創設者のサム・アルトマンが手掛けるChatGPTを筆頭にした昨今のAIの進化速度は圧倒的です。このAIの進化に伴い、AIがもたらす利益を人間が得られるようにシステム化することが重要だと考えられています。人間が正しく利益を得るためには、自身が人間であることを証明する必要があります。そこで、Worldcoinは、「Orb」という高度な虹彩認証デバイスを使用することで人間であることの証明書である「World ID」を発行します。
2つ目は「ユニバーサルベーシックインカムの実現」です。
爆発的なAIの進化に伴い、人間の雇用機会が減少する可能性があるのではないかとの議論があちこちで行われるようになりました。そこでWorldcoinは、ユニバーサルベーシックインカムを実現することで、AIによって雇用機会を失ってしまった人たちにも最低限の収入が入るような社会デザインを目指しています。Worldcoinは、WLD(Worldcoin Token)という暗号資産を展開し、World IDを発行した際に無料でWLDを配布し、その後も定期的にWorld ID発行者にWLDを配布しています。
上のWorldcoinの説明でも登場した、「World ID」、「Orb」、「WLD」に加えて「World App」の4つがWorldcoinの中核となっています。もう少し詳しく見ていきましょう!
Worldcoinは、AIが発展していくことでAIが人間の能力と同等以上まで進化する未来を見据え、人間とAIの区別を行う必要性があると考えています。そこで、自分が人間だと証明するための証明書のような役割を果たす「World ID」を創りました。
このWorld IDの最大の特徴は、ユーザーの個人情報を公開することなく人間の証明ができることです。人間であることを証明するために、住所や電話番号などの個人情報を教えていては、自分の個人情報が流出する可能性が高くなってしまいます。このような問題を解決するためにWorld IDにはゼロ知識証明という手法を活用することで、個人情報を一切公開しないままで人間だという証明を可能にしています。
World IDを発行するために使用されているデバイスが「Orb」です。このOrbは、虹彩を使用して人間を認証しています。身近な生体認証は、指紋認証や顔認証を使用しているケースが多いですが、虹彩認証は指紋や顔認証とは比べ物にならないくらいの精度を誇ります。指紋認証よりも正確な認証として顔認証が登場しましたが、虹彩認証は顔認証の1万倍以上の精度を誇っています。そのため、理論上は何十億人という単位で虹彩の区別を行うことができると言われています。この、超高精度な虹彩認証によって、World IDの登録の際に同じ人物がいないかどうかを判別し、1人に1つだけのWorld IDを発行することに成功しています。
また、Orbに関する技術は、出来る限りオープンソースにしていく予定だとWorldcoinが発表しています。Orbの構造について記した画像をX(旧Twitter)に投稿したり、ハードウェア関連のエンジニアリングファイルがGitHubに公開されていたりします。
Orbの詳しいエンジニアリングファイルを見たい人はこちらのリンクをご覧下さい!
Worldcoinは、2023年8月に多くの暗号資産取引所でWLD(Worldcoin Token)を上場しました。WLDは、World IDを発行したユーザーに定期的に配布されています。Worldcoinは、合計100億枚のWLDを発行する予定です。そのうち80億枚はWorldcoinユーザーに、残りの20億枚は、Worldcoin財団及び投資家に回されるとの発表がされています。
Worldcoinを1つに繋げているのが、「World App」です。World Appは、Orbの虹彩認証で発行したWorld IDを保管したり、WLDの保管やその他の暗号資産との取引が可能なウォレットのことを指します。ここまで紹介してきた、World ID、Orb、WLDを繋いでいるのがWorld Appになります。また、World Appを使ってOrbがおかれている場所を調べることもできます。
2023年11月時点で、World Appは約400万ダウンロードを達成し、10万人以上の日間アクティブユーザーに、50万人以上の月間アクティブユーザーを獲得していると公式ブログにて発表されています。
Worldcoinは、2023年8月から本格的なプロジェクトを開始しましたが、本格始動前から約200万人のユーザーを獲得していました。というのも、8月のプロジェクト開始数か月前から一部で試験的にWorldcoinを導入していました。例として日本では、2023年6月に開催されたIVS2023 KYOTO、7月に開催されたWEBXの会場にOrbが設置されており、実際にWorld IDを発行することができました。その他にも世界的なWeb3関連のイベント会場に設置していたため、本格始動前から多くの注目とユーザーを獲得することに成功していました。
現在(2023年11月22日時点)では、約250万人のユーザーが世界中に存在し、約120ヵ国からのユーザーと、34ヵ国でのOrb検証を終えています。
8月に暗号資産取引所に上場したWLDでしたが、上場開始時には一時的に価格が上がったものの、その後は9月半ばまで下落し続けました。しかし、9月後半から現在にかけてゆるやかに回復し、11月半ばには上場時と同等の価格まで回復しています。
ここまで、Worldcoinについて説明してきましたが、世界的な注目が集まっていると同時に、問題点も指摘されています。ここからは、そんなWorldcoinの問題点について一部ご紹介します。
Worldcoinの目標の1つである「ユニバーサルベーシックインカムの実現」ですが、その具体的な方法論やビジョンがいまだ明確ではありません。そのため、Worldcoinが発行しているWLDですが、現状では具体的な価値を持っていません。にもかかわらず現在のWLDにはある程度の価値がついていることも事実であり、現在の価格は過度な期待によって成立しているという指摘も見られます。
OrbとWorld IDによる人間の証明は非常に面白いアイデアですが、その先のユニバーサルベーシックインカムの実現のための具体的なビジョンへの繋がりが現段階では全く見えていないことも事実です。WLDの配布をベーシックインカムの基盤とするのであれば今後どのようにWLDの価値を創造するのか、あるいは全くもって新しいベーシックインカムをデザインしているのか、今後のWorldcoinの動向に注目が集まっています。
Worldcoin全体でのセキュリティリスクやプライバシーの問題が危惧されています。過去には、中国のブラックマーケット上に虹彩情報が販売されているのではないかという噂が流れたり、ケニア政府からケニアでの活動を禁止されています。また、Worldcoinがユニバーサルベーシックインカムの実現を掲げたりWorld ID発行でWLDを報酬として与えることによって、貧困層からの関心を集め、貧困層から情報を搾取しているのではないかとの疑惑の声も上がっています。
もちろん、Worldcoinは個人情報を販売、流出していないと発言していますが、個人情報の取り扱いはともかく、アジアやアフリカの低所得国でWorld IDの発行と、発行によるWLDの配布を行ったことは事実であるため、WLDの持つ金銭的価値をちらつかせてユーザーを不当に獲得しているという疑惑を晴らすことはできません。
今回は、今話題のサム・アルトマンが手掛けている「Worldcoin」について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。Worldcoinについて少しでも理解できたと思っていただけましたら幸いです。
本記事からも分かる通り、「サム・アルトマンが手掛けているから」という理由で完全に信じることができるようなプロジェクトではありませんが、目指している世界や実際のプロジェクト内容などの面白さは伝わってきたのではないでしょうか。Worldcoinは2023年8月から本格的に開始したため、まだまだスタートしたばかりで、今後の展望に注目が集まっています。Worldcoin自体はWeb3領域のプロジェクトに見えますが、AIの進化に対する回答としてWorldcoinが誕生していること、そして何よりサム・アルトマンがOpenAIを率いていることを考えると、今後はWeb3とAIの両領域を交えたプロジェクトへと進化していく可能性も大いにあります。Worldcoinが描く未来に注目していきましょう!
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